ばうんてぃえぴそ~どSS 砂の魔女(66)

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「なんでユノにはパパがいないの?」
 無邪気な『娘』の何気ない問いは、執拗に『母』を追い詰めていく。
 だが『おままごと』は始まったばかりだ。まだ物心ついたばかりの幼子に序盤からチェックを取られて怯むようでは、この先の長い対話(かけひき)など到底無理だろう。
 そして、マリーナは引き下がらない。たとえそれが限りなく不可能に近いことであっても、彼女が途中で諦めて投げ出すことなど決してあり得ない。それは時として、弱点にもなり得るこの少女の美点だ。
「ええと、お父様……パパはお仕事が忙しいから、ユノとは中々会えないの(という設定)ですわ」
「そうなの?」
「え、ええ……そうですわ」
 ぎこちなく笑顔を作りながら、苦し紛れにそう答えるマリーナ。されど、まだ疑う事を知らないのか、ユノは少し寂しそうに人差し指をくわえて「そっかー」と小さくうなだれた。
 思ったよりも子供らしい『魔女』の反応に少し戸惑いつつも、マリーナの表情が俄かに緩む。

 それはほんの束の間の、刹那の安息だったのかもしれない。

 不意に幼子の顔が明るくなったかと思えば、無邪気な貌で一つの『答』を口にした。
「じゃー、もう一人パパがいればいいんだね?」
「え?」
 その言葉に、マリーナは何か不吉な予感を覚えた。
 そんな彼女を気にも留めずに小さな『魔女』はその場でしゃがみ込み、足下の砂に指先で何やら落書きする。
 マリーナは眉をひそめて幼子の方を覗き込むと、そこには記号のような絵――いや、絵文字が書かれていた。
「まあ、良くそんな難しい字を知ってますわね。賢い賢い…………って」
 思わず感心して頭をなでようとしたところで、彼女はその“魔道文字”の意味に気がついた。そして――


 命(エメス)という意味を持つその文字に青白い光が宿り――――少女の目の前で、それが産まれた。
 
 
 
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