水無月のその夜、炎は激しく燃え続けていた。全てを焼き尽くすが如く・・・・。 焔(ほむら)の中で独り、優雅にそして美しく舞う。その最期の一瞬(・・・・・)でさえも力強く、そして鮮やかな印象を遺して。 一指し舞い終え、その男は笑った。それは ― 信じて…

「きゃっ！」 「なんだ！ 今の爆発は？」 とホーレック。女達を突き飛ばし慌てて部屋を飛び出す。 「あぁん！ ホーレック様ぁ～」 金塊を手に階段を駆け下りると、そこには――扉を破ってエントランスに待ち構えている二つの影。 「何奴だ!? ここは貴様らのよ…

岡の錬金術師 とある山の手の一角 ― ここにはカネが溢れている。 文字通り、何百万もの金の山が湧いて出るのだ。 そして今宵も、パラケルス・ヒルズに男の哄笑が響く。 「た～い～く～つぅ～～～！」 開口一番、彼女は不満の声を漏らす。 栗色の三つ編みを指…

とりあえず書くネタがないので、進捗状況を・・・ ・ばうんてぃくえすと－新作考案中・・・・今回は、なるたけ短編にしたいですねぇ(＝＝； ・史立探偵 京子の事件簿－京・本能寺殺人事件の続きを執筆中 （このまま新幹線で延々と会話・・・だったら嫌だなぁ…

天正(てんしょう)10年2月14日 ― サン＝ヴァレンティーノが冥福を祈り、紳士淑女が永久(とわ)の愛を誓い合うその日 ― 遥(はる)か東の夜空は異様なまでに明るく、そして燃えるような赤き星が瞬(またた)いていた。 怪異に満ちたその凶星(まがぼし)は、天空を焼…

倒れた男を、冷めた目で見下ろすハロルド。 眉間に傷の男は、ただ呆然とつっ立っていた。たった今、目の前で起った出来事を理解出来ぬまま。 「う……うぅ………」 ピクりとハロルドの眉が動く。 無言のまま、まだ微(かす)かに息のある赤髪の男目掛け、右手の得物…

ルーシアは、一瞬相棒の少年に視線を移す。 こくりと彼は頷いて、懐から小石大の鉛玉のようなものを２・３個取り出す。 「セイッ！」 その刹那の隙を突き、眼帯の男が少女に斬りかかってきた。が、しかし、不意に彼女の腰の剣が閃(ひらめ)く。 ガギン！！ 鈍…

もう日付変わって昨日の話になりますが、神保町ぶらついてたら名作とバッタリ遭遇♪ その日は散策と時間あったら『オリバー･ツイスト』でも観に行こうかと思ってたんですが、 それを見た瞬間、レジへ直行！ 書店を出て、その足で近くの茶店でＧＯ！ 読んでる…

「中々現れないねー？」 ぼやきつつも、森を往くルーシア。彼女を挟みこむ体勢で、並んで歩くアレスとハロルド。 宿を発ってから半日、辺りは夜の闇と暗緑の森に覆われた白銀の世界。２日間にわたり降り続いていた雪も、すっかり止んでいた。 ハロルドの話に…