やおよろず夜伽話<序之章>

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   序之章 ――​オウノイズミヒメ――



「​また世界が()いておる……」​
 どことも知れぬ闇の中で、囚われの姫が呟く。
「​何人(なんぴと)も、かの声が聞こえぬかや? 嗚呼、啼くな啼くなとなだめようとも、啼き止まぬこの声を。誰ぞ、かの者をなだめやる者はおらぬかえ?」
​ しかし、声は闇に消えるばかり。音の閉ざされし世界は、今もまだ姫の周りを囲い続ける。

​ シャリーン、シャリーン――

 御簾(みす)の外に侍る童女が二人、同じ顔を揃えて斜めに傾けている。いや、正確には交互に見つめ合いながら、首を左右に傾け合っている。まるで、姫の言葉に合わせる調子で、二人は一定の間隔で音頭をとる。

​ シャリーン、シャリーン――

 彼女たちの振る間に合わせ、透明な鈴の音が音なき世界に響き渡った。
 ​不意に、姫は頭を上げた。その胸元で、深緑の勾玉が微かに震えている。
「嗚呼、また。啼き叫びおるか。否、まだ啼き終えぬかや。まほろばの天地よ?」
​ だが、それに応える心算はないのか、勾玉の振動は徐々に大きく、
 内なる激情を吐き出すように胸元で啼き続けていた。


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(C)さるたま文庫[文]×雑木林本店通信所[画]

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筆者からのごあいさつ

 どもども、さるです。
 いよいよ月一コラボ連載ということで開始しました『やおよろず夜伽話』ですが……
 ごめんなさい、ちょっと更新の際にさるの方で色々と手間取って遅れてしまいました(A ̄Δ ̄;@)
 ちなみに今回挿絵を担当されているカザミヒナタ様の方では、予告通り27日付で更新されてます(まるで出来る人と出来ないヒトとの差みたいな……orz)
 こんな調子ではありますが、カザミさん、そして読者の皆様方どうか最後までお付き合い下さいませm(__)m

さる