ばうんてぃえぴそ~どSS 砂の魔女(38)

.

『魔女』は再び、独りつぶやく。冷たい闇の中で。
「アレはもう、彼方へと辿り着いたのであろうか。或いは、縁(えにし)を移ろうておらんや……」
 しかし、それに応える者は、もうそこには居なかった。


「……あれは、人にして特異なる存在……」
 セレーナが静かに言葉を紡いだ。
 そこは暗い闇の中で、一本の蝋燭に宿る灯火だけが微かに照らす屋内――この都市で『セレーナの館』と呼ばれている彼女の仕事場兼住居。
 マリーナ達はセレーナから詳しい話を聞くため、彼女にこの狭い石造りの建物まで案内されたのだ。
 炎天下で立ち話をするような内容でもなければ、況してそんな自虐的な趣味や体力などある筈もない。
「それは『人為らざる者』という意味か?」という東方娘――フィオの問いに答えたのは、彼女ではなかった。
「どちらかと言えば『人の身で在りながら、それを超越した存在』といったところですわね。おそらく……」
 隣で、涼しげに訂正するマリーナ。彼女は澄ました顔で右手を頬の上辺りに当てながら、左手で金のソバージュを払う。そこへ、
『プププぅ~~~、それはもしやベル先生の真似ですかぁ? マリーナさんがやっても全然似合わないのですよぉ』
 頭の中でヤジが飛ぶ。
「べ、別に、あの人の真似をしたワケじゃないですわっ!」
『あれれぇ~、マリーナさんは眼鏡を掛けてもないのに目尻の所を押さえる癖でもあるんですかぁ?』
「なっ、ないですわよ……ど、どうでも良いでしょ、そ……」
「あの~……ま、マリーナさん……先刻から、独りで何ブツクサ言ってるか?」
「な、何って……あ…………」
 戸惑うフィオの声でようやく気づいたか、おろおろと周囲を見渡すと、マリーナは全身を流れる血が沸騰するような想いに駆られ、そのまま真っ赤な顔を両手で覆い隠した。
「ま、とにかく、話続けるね」
 仕切り直しとばかりに、フィオがセレーナに促す。
 それに応えるように、彼女は再び口を開く。
「…………以上よ…………」
「そう、以上ね…………」と一瞬、頷きかけたが、しかし次の瞬間、
「……って、えええええぇっ!?」
 少女の叫びが静寂を打ち破る。その時――
 
 
「はひっ! な、何事デスか、今の?」
 彼方から迫りつつある邪な気配に、戦慄が走った。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ランキングに参加してま~す♪

にほんブログ村小説(ライトノベル)人気ランキング
https://novel.blogmura.com/novel_light/
小説(ファンタジー・SF)人気ブログランキング
 
皆様、ぜひぜひ応援よろしぅm(__)m


さる
 
.