血塗られた封印の城 第三章(10)

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 カザミヒナタ様より、挿絵を戴いちゃいました♪ さる

  五年前、アマタニア――
「ジークフレド・ヨハネハイム。十五歳か……」
 難しい表情で学歴書を眺める老博士。机の上で、右の人差し指が忙しく音を立てる。
「中々成績優秀な子ですよ、彼は」
 少年の隣で、まだ二十歳そこそこの教師が、熱い眼差しを老博士に向ける。
 だが一方で、黒く癖のある髪を掻きむしりながら、少年は気だるそうにそっぽを向いていた。
「ま、素行不良なところは目を瞑るとして、これだけの才覚があれば都市学院(アカデミア)でも十分やっていけそうだな」
 老博士は机の上に学歴書を置くと、その上から無造作に判を押した。
 そしてにこやかに、
「では、彼の担任を紹介しよう」
 告げてから老博士は一瞬、横目で左の扉の方を見る。そして、
「サンドーラ教授、入りたまえ」
 その扉が開くと、そこから肌の白い白金の髪(プラチナ・ブロンド)の教授が入ってきた。
 彼は、落ち着き払った様子で少年の方を向くと、屈託のない笑みを浮かべた。
 少年の方も、彼を見た。
 それまで何処かつまらなそうに眺めていた少年の眼が、教授の姿に釘付けになる。
「若いが、とても優秀な自慢の弟子だよ。彼なら、ヨハネハイム君の担任にも最適だ」
 若い……なんてもんじゃねぇ、俺より全然年下じゃないか!
 心の奥でつぶやく少年。
 その教授は、少年の前まで来ると笑顔のまま右手を前に差し伸べた。
「右手……」とつぶやく黒髪の少年に、
「ジークフレド・ヨハネハイムさんですね。アレス・サンドーラです、よろしく」
 白金の髪(プラチナ・ブロンド)の少年が、澄んだ琥珀の瞳を向けて挨拶した。
 黒髪の少年―― ヨハネハイムは、自然とその手を握っていた。


「でも、あの頃よりは円くなりましたよ先生」
 話しながら、真中で分けた黒髪を掻く青年―― ヨハネハイム。
「そのようだね、ただ面倒臭がりなところは変わってないみたいだけど」
 アレスが悪戯っぽく笑みを浮かべる。それを見てヨハネハイムも、
「そういう先生もその性格、全然変わってないじゃないですか」
 負けじと言い返す。
「しかしジークがねぇ、魔道力学を教えてるなんてね」
「さっきの聞いてたんですか、それとも読んでたんですか(、、、、、、、、)?」
 意味深なヨハネハイムの質問に、
「さあ、どっちだろうね?」
 意地悪くそう答えるアレス。
「ま、いいですけどね。そういえば最近、面白い生徒がいましてね」
「へぇ、どんな?」と、白々しい顔で訊くアレス。
「その顔だと、もうご存知なんでしょうけど、ルーシーというちょっと変わった子ですよ」
 そこで煙草を一本取り出し、口に咥えてからヨハネハイムは着火灯石器(ハンディ・フリンター)をカチカチ鳴らしながら火を点ける。
「ま、先生も彼女に会ったら解りますよ」
 楽しそうにそう言って、煙をふかすヨハネハイム。
「まぁ、確かに面白いだろうな……彼女は」
 少し含みのある言葉をつぶやき、アレスは懐中伝話(モバイルトーカー)の時計を眺め、
「さて、私はそろそろ行くよ」
「ではまた、お元気で」
 手を振って、アレスは歩き出す。
 その背を眺めながら、ヨハネハイムはポケットから取り出した平な缶の丸穴に、煙草の灰を捨てた。