血塗られた封印の城 第二章(9)
今のは……何でしたの?
蒼き闇に染まった部屋。
少女の震えは止まらず、不可解な疑問を心に抱いたまま、閉ざされた空間に独り取り残されていた。
あたくしは……一体何を……
彼女は恐る恐る自分の頬、肩、胸と、右手を滑らせるように触れる。右手に伝わる鼓動は、まだ激しく波打っている。
冷たい
乱れた金髪をそのままに、青き瞳はただ虚ろの空間を眺めていた。
「ルーシーさん!」
後から駆けつけてきたエレジアが叫ぶ。
その様子を碧の瞳で正面から見据える少女、ルーシア。白いネグリジェの襟元が少し乱れてはいるが、しかし彼女は化物から目を離さない。
周囲が固唾を飲んで見守る中、渇いた時間だけが無為に過ぎ去っていく。そこへ、
「ルーシーさん……」
少女達の間を掻き分けて、エレジアが前に出る。他の生徒と同じネグリジェ姿だが、その手に抱かれている重い木刀が異彩を放っていた。
「エレジア!」
言うなり右手を彼女に向けてかざすと、ルーシアは横目で合図を送る。
「え……? あ………」
エレジアは一瞬、彼女の意図が読めてなかったのか、ほんのわずかだけ遅れてから手に持った木刀を彼女に向けて投げ放つ。
だが、そのほんのわずかの間に隙が生じた。
ルーシアが木刀を受け取ろうと腕を伸ばしたその時、異形の身体が不意に沈む。そして床を蹴る音。
木刀をつかみ振り向いたルーシアの視線の先には、
「おっと!」
繰り出される鉄爪を右に避けると、ルーシアは手に持つ木刀で爪を払い、そのまま懐に入って化物の胴を薙ぐ。
「ぐへぁっ!」
腹を抱えて悶絶する化物。木刀を突き出し、ルーシアは化物へと詰め寄る。
「どう、観念した?」
しかしそれには答えず、化物は微かに笑みを浮かべた。
それを見たルーシアの背中に、何だか悪寒のようなものが走る。
刹那、黒い閃光がルーシアの身体の前を